第159回直木三十五賞を受賞し、これまでも多くの作品が映画化されてきた小説家・島本理生の2012年に発表した傑作恋愛小説を、主演の松井玲奈自身が惚れ込み、長年熱望していた映像化がついに実現した。『Dressing Up』などの作品を手掛け、本作で長編映画2本目となる監督・安川有果と、今や映画業界で引っ張りだこの城定秀夫が脚本としてタッグを組み、原作本来の魅力を、映画としてさらに引き立てる。 松井は、本作との特別な関係ゆえの、ひとかたならぬ想いを抱いて撮影に臨んだ。その想いは、松井ならではの儚くも力強い、凛とした雰囲気と相まって、陰を秘めながらも、なんとか強くあろうともがくアイコを、より一層魅力的な女性にしている。 飛坂を演じた中島歩は、ともすると身勝手に見えてしまいそうなキャラクターを、自然体で愛嬌があり、なぜか好感を持ってしまう好青年として演じるその演技力で、若手俳優陣の中でも際立った存在感を放っている。他にも、出版社に勤務するアイコの友人役に織田梨沙、研究室の仲間役に藤井美菜、青木柚など、急速に注目度を高めている若手俳優が集まった。
理系女子大生・前田アイコ(松井玲奈)の顔の左側にはアザがある。幼い頃、そのアザをからかわれたことで恋や遊びには消極的になっていた。しかし、自身の半生を描いたルポルタージュ本の取材を受けてから状況は一変。本の映画化の話が進み、監督の飛坂逢太(中島歩)と出会う。初めは映画化を断っていたアイコだったが、次第に彼の人柄に惹かれ、不器用に距離を縮めていく。しかし、飛坂の元恋人の存在、そして飛坂は映画化の実現のために自分に近づいたという懐疑心が、アイコの「恋」と「人生」を大きく変えていくことになる・・・。 本作は、アイコと飛坂との恋愛を切ない距離感を感じるラブストーリーのみならず、アイコが自分の人生と向き合い、前に進んでいく様を繊細に描き出す。そんなアイコの姿は、誰もが抱える弱さと響き合い、その弱さを新しい視点で見直し、アイコと共に一歩前へ踏み出す力を与えてくれるはずだ。世代や性別を超えて幅広く、静かに、でも確かに、心に響く傑作が誕生した。