主演・のん×監督・堤幸彦×原作・柚木麻子 「私は私の夢を叶える!」文学史上最も不遇な新人作家・加代子 しがらみだらけの文学界を舞台に、文壇下剋上が始まる―― 新人賞を受賞したにも関わらず、未だ単行本も出ない不遇な新人作家・相田大樹こと中島加代子(のん)。その原因は、大御所作家・東十条宗典(滝藤賢一)の酷評だった。 文豪に愛された「山の上ホテル」に自腹で宿泊し、いつかこのホテルにふさわしい作家になりたいと夢見る加代子は、大学時代の先輩で大手出版社の編集者・遠藤道雄(田中圭)の力を借り、己の実力と奇想天外な作戦で、権威としがらみだらけの文学界をのし上がっていく。 出版界の裏側と作家の思いの丈を赤裸々に描き「危険な作品」と呼び声も高い、柚木麻子の同名小説を原作に、ドラマ『ケイゾク』『池袋ウエストゲートパーク』や『TRICK』『SPEC』シリーズ、映画『20世紀少年』三部作(08)などの話題作を手がけてきた巨匠・堤幸彦監督が映画化。 2024年2月に惜しまれながら全面休館を迎えた「山の上ホテル」を舞台に、昭和レトロな空間で繰り広げられる、堤監督ならではの隅々まで計算された演出と映像美。野心あふれる新人作家の加代子と、文壇の権威の象徴である東十条との攻防をコミカルに描くだけでなく、一癖も二癖もある登場人物の魅力を最大限に引き出し、ウィットに富んだ極上の痛快逆転ストーリーを作り上げた。 “不遇な新人作家”のん “権威主義の大御所作家”滝藤賢一 “曲者・敏腕編集者”田中圭 文学賞は出来レース?権力者からの妨害は当たり前?売れない作家はゴミのような扱い? 主人公・中島加代子を演じるのは、NHK連続テレビ小説 『あまちゃん』(13年)で話題を集め、映画『さかなのこ』(22)では「第46回日本アカデミー賞」主演女優賞を受賞するなど、俳優としての実績を重ねている、のん。主演映画『Ribbon』(22)では脚本・監督も務め、近年ではアーティスト、ミュージシャンとしても表現の場を広げている。本作では、不屈のエネルギーとピュアな佇まいを兼ね備えた、唯一無二の存在感でコメディエンヌとしての才能も発揮している。瀟洒な山の上ホテルや文壇バー、豪華な銀座のクラブといった、昭和レトロ感あふれる世界観に見事に溶け込み、レトロキュートなファッションを着こなす姿にも注目だ。 そんな加代子の宿敵、大御所作家・東十条宗典には、ドラマ『半沢直樹』(13)での強烈な個性を放つ銀行員役で「第68回日本放送映画藝術大賞」優秀助演男優賞を受賞し、変幻自在な稀代の名バイプレーヤーとして話題作への出演が続く滝藤賢一。「女はかくあるべし」が口癖の尊大さの中にも、内に秘めた焦燥感やイノセンスを求める姿を垣間見せ、加代子になぜか振り回されてしまう、どこか憎めない姿を好演する。 大学時代の先輩で、加代子の才能を認めて世話を焼きつつも、時に焚きつけたり突き放したりする編集者・遠藤道雄を演じるのは、ドラマ『おっさんずラブ』(18)で人気を博し、「東京ドラマアウォード2018」主演男優賞をはじめ、数々の賞を受賞する田中圭。加代子や東十条といった猛獣のような作家を巧みに操り、才能至上主義で作品のためなら手段を選ばない敏腕ぶりを、余裕の中にも人間味をにじませる演技で作品にリアリティを持たせる。 東十条が行きつけにしている銀座のCLUB「ジレ」のママ・明美には、映画『ずっと独身でいるつもり?』(21)で主演を務めるなど、俳優として独自の存在感を増している田中みな実。大御所作家を虜にし、手のひらで転がす美貌の手練れママぶりで作品に彩りを添える。 そして、加代子のライバルとなり遠藤が心酔する天才女子高校生作家には服部樹咲、東十条の愛娘には髙石あかりといったエッジの効いた旬な2人が。そして、加代子が返り咲くきっかけとなるカリスマ書店員を橋本愛が演じ、独特な雰囲気で加代子に対峙して新境地を見せる。 ズタボロになっても何度でも立ち上がり、成功を己の力で引き寄せていく加代子の奮闘に、手に汗を握りながらいつしか虜になっていく。驚いて、笑えて、スカッと元気をもらえる“痛快逆転下剋上”がここに誕生した。
新人賞を受賞したにも関わらず、未だ単行本も出ない不遇な新人作家・相田大樹こと中島加代子(のん)。その原因は、大御所作家・東十条宗典(滝藤賢一)の酷評だった。 名だたる文豪に愛された「山の上ホテル」に自腹で宿泊し、文豪気分に浸り原稿用紙に向かっていた加代子の元に、大学時代の先輩で大手出版社の編集者・遠藤道雄(田中圭)が訪れる。遠藤から、上階に文芸誌の締切のため東十条がカンヅメ中だと聞かされた加代子は、「東十条の原稿が上がらなければ私にもチャンスが……」と、不遇の元凶である東十条への恨みを晴らすべく、「騒音作戦」、「三島の亡霊作戦」を考え、部屋に乗り込んで一芝居打つ、などの奇想天外な作戦で執筆の邪魔をし、掲載のチャンスをつかみ取ることに成功する。 念願の作家活動をスタートさせた加代子だったが、相田大樹の正体を訝しんだ東十条の妨害により、夢にまで見た単行本が発売されないことに。悔しさで怒りが頂点に達した加代子は、遠藤に連れて行かれた文芸新人賞の授賞式で再び宿敵の東十条に出くわしてしまう。 東十条からの怒涛の追及を「人違い」で乗り切ろうとする加代子は、持ち前の演技力で別人になりすまし、東十条の行きつけの銀座のクラブに同行。この世の不公平さを熱弁し、店中の酒を飲み干し、美声で東十条の大好きな曲「夜霧よ今夜も有難う」を披露して、その場の全員を自分の世界に引き込み、東十条を煙に巻く。 しかし、依然として作家活動に行き詰まる加代子は、遠藤の策略で新人作家・有森樹季として新人賞を受賞し、別人としてデビューを飾ることに。今度こそ華々しい作家人生が訪れたと思いきや、遠藤は女子高生作家・有森光来(服部樹咲)に心酔し、加代子のことは放置状態に。やさぐれた加代子がバーで偶然にも居合わせたのは、加代子への怒りのおかげで執筆への意欲が戻ってきた東十条だった。 遠藤が加代子のみならず東十条のことまでこき下ろす様子を目撃した2人は、一時休戦を誓って結託し、遠藤を地獄の底まで追い込む計画を立てるが、加代子の強引な計画は思うように進まずに二人はタッグを解消。その後も新刊が売れずにどん底に沈む加代子だったが、書店で万引き犯を捕まえたことで注目を浴び、再び人気作家に返り咲く。そして、夢にまで見た「鮫島賞」の候補となった加代子の前には、またしても選考委員の東十条が立ちはだかるのだった。受賞の望みのない出来レースだと怒り狂う加代子は、遠藤に「一緒に堕ちてくれますか!?」と起死回生の“ある作戦”を持ちかける――。 「私は私の夢を叶える!」と、何度でも立ち上がり、不屈の精神と荒唐無稽な奇策で理不尽な文学界をのし上がっていく加代子。果たして、加代子は山の上ホテルにふさわしい作家になれるのか…!?