佐藤さんと佐藤さん

Sato and Sato

佐藤さんと佐藤さん

Sato and Sato

2025年11月27日公開

Director

天野千尋

Cast

岸井ゆきの
宮沢氷魚
藤原さくら
三浦獠太
田村健太郎
前原 滉
山本浩司
八木亜希子
中島 歩
佐々木希
田島令子
ベンガル

OFFICIAL WEBSITE

Introduction

活発でダンス好きなアウトドア派の佐藤サチと、正義感が強くて真面目なインドア派の佐藤タモツ。大学のサークル「珈琲研究会」で出会った正反対な性格のふたりはなぜか気が合い、同棲を始める。5年後、弁護士を目指しているタモツは司法試験に失敗。会社員として働いているサチは独学を続けるタモツに寄り添うために、自身も勉強をして司法試験に挑むことに。さらに3年後、司法試験に受かったのはタモツではなく、挑戦を応援している側のサチだった!そんななか、サチの妊娠が発覚してふたりは結婚。産後すぐに弁護士として忙しく働き始めたサチと、試験勉強をしながら家事、育児、バイトに明け暮れるタモツは衝突するようになっていくーー。

恋人同士だったときには惹かれていた相手の魅力が、すれ違いの原因になる瞬間。最初は些細なものだった違和感が、やがて言葉にできない苛立ちへと変わり、隠しきれない不満となって日常ににじみ出す瞬間。笑い合った日、ぶつかった日、沈黙の夜、“夫婦”というかたちが揺れ動く日々を見つめ、出会ってから別れるまでの15年間を描き出す。ふたりで生きることの喜び、楽しさ、悲しみ、切なさ、そのすべてが詰め込まれた、ヒリヒリするほどリアルで、誰かと生きることにまっすぐに向き合ったマリッジストーリー。

恋愛のその先で結婚をして家族になるという選択をしたサチとタモツの物語は、観る者の立場や経験によって、まったく違った表情を見せるものかもしれない。未婚の人には恐らく想像していたよりもビターな現実を見せる物語であり、生活に追われる既婚の人には、小さなボタンのかけ違いが取り返しのつかないズレを生んでいく共感度の高いエピソードの宝庫。恋や結婚に憧れを抱く人も現実を知っている人も、それぞれの立場でふたりの姿に自分自身のなかに潜む感情を重ねずにはいられない。何より、それでもともに暮らそうと向き合うふたりの物語は、誰かに寄り添って生きようとした経験のあるすべての人たちへのエールのように響く。

W主演を務めるのは、『ケイコ 目を澄ませて』で数々の映画賞を受賞し、観る者の記憶に深く刻まれた岸井ゆきのと、『エゴイスト』で繊細で深みのある演技を見せ、高い評価を得た宮沢氷魚。朗らかさと芯の強さを併せ持つ岸井の存在感がサチというキャラクターに深みを与え、宮沢は自分なりに最善を尽くしながらも社会やパートナーとの距離にもどかしさを感じるタモツの心の揺れを、丁寧に表現した。本作でついに初共演を果たしたふたりが、15年という時間の流れを自然に、濃密に表現している。

監督は『ミセス・ノイズィ』で鋭い人間観察眼を感じさせた、天野千尋。『話す犬を、放す』などで知られる熊谷まどかと共同でオリジナル脚本も執筆。本作でも日常的な出来事を積み重ねて人と人との対立にまなざしを向け、ユーモアも交えた語り口でひと組の夫婦の出会いと別れを描き出した。性差ではなく立場や環境によって役割が変化していく視点も盛り込み、本作をきっかけに今後の日本映画界を担っていく存在として、その才能にますます注目が集まることは間違いない。説明のつかない感情を抱えたまま未来へと漕ぎ出そうとするエンディングの余韻を、優河による主題歌『あわい』がより深いものにしている。

結婚しても離婚しても「佐藤さん」の苗字はそのままのサチとタモツ。関係は変わっていくけれど、ドミノ倒しになった自転車をめぐるふたりだけの思い出を胸のなかで分かち合い、ともに子どもを育てながら人生は続いていく。甘さだけでも苦さだけでもない日々のリアルを通して投げかけられる、結婚とは?誰かと一緒に生きることとは?という問い。共感や苛立ち、ささやかな希望が同時に押し寄せ、観たあとで誰かと語り合いたくなるマリッジストーリーが誕生した。

Story

22歳
サチは、大学の同級生の佐藤タモツが駐輪場でドミノ倒しになった自転車を起こしてあげようとするところに出くわす。サークル「珈琲研究会」に所属するふたりだが、活発でダンス好きなアウトドア派のサチと、正義感が強くて真面目なインドア派のタモツの性格は正反対。それでもなぜか気が合い、大学のキャンパスにはふたりで歌いながら自転車に乗るサチとタモツの姿があった。

27歳
ふたりは古い1L DKのマンションで同棲中。弁護士を目指しているタモツは司法試験に失敗する。法事のため、一緒に兼業農家であるタモツの福島の実家を訪ねると、家族は結婚のことや将来のことについて心配している様子。サチは会社員として働いているが、塾講師のアルバイトをしながら独学を続けるタモツに寄り添うために、自身も勉強をして司法試験に挑むことを提案する。

30歳
司法試験の合格者発表をふたりで見に行くが、合格したのはサチだけだった。サチはあと4年は受けられるとタモツを励ますが、気まずい空気が流れる。大学時代の友人の披露宴にサチだけが参加した夜。サチの「トイレットペーパーないよ」のひとことをきっかけにギクシャクして、ふたりは激しく衝突してしまう。そんななか、サチの妊娠が発覚。子供ができてうれしいというタモツと、結婚しても別に何が変わるわけでもないというサチは婚姻届にサインをする。こうして「結婚しても佐藤、離婚しても佐藤」の夫婦の暮らしが始まった。この年、司法試験の当日に交通事故にあったタモツは貴重な試験の機会を失う。

31歳
息子のフクも生まれ、お宮参りに行った日。サチの両親は結婚式を挙げなかったことや、御祈祷料の件を口に出し、娘の家庭を心配している。サチは産後すぐにひまわり法律事務所で弁護士として忙しく働く毎日。一方、タモツは家で息子の世話の片手間に司法試験の勉強をしているため、全く集中できずにいた。

32歳
タモツは今年も司法試験に合格することが叶わなかったが、タモツが発熱した日にはサチが仕事を休まざるを得ない。数ヶ月後、タモツが次の司法試験の願書を出していないことがわかり、憤るサチ。「毎日フクの世話ばかりで君はどんどん自由に羽ばたいていく!」と爆発するタモツと、「私のどこが自由⁉︎」と反撃するサチは路上で派手なケンカをして、警察のお世話になってしまう。


33歳
マンションの隣室で火事が起こり、一時的にサチとフクはビジネスホテル、タモツは実家へ向かう。同級生と居酒屋で盛り上がり、地元の復興やNPOの立ち上げについて熱く語り合うタモツ。ワンオペで余裕のないサチに、唐突に将来は福島で暮らしたいと告げるが、サチからは「逃げてるよね」と言われてしまう。東京に戻ったタモツを待っていたのは、塾講師のアルバイトと司法試験の勉強、家事、育児に追われる日々。サチが忙しさを理由に息子の支度を忘れたり、タモツが作った弁当を食べないまま持ち帰ったり、ソファで靴下をだらしなく脱ぐ姿を見てはイライラが募っていく。育児に対する考え方やアプローチの仕方も全く違うふたりの衝突は、フクの保育園でのトラブルをきっかけについに離婚話に発展。「養育費払えるの?」というサチに、タモツは「試験に受かって離婚する」と答えるが……。