早乙女カナコの場合は

As for Me

早乙女カナコの場合は

As for Me

2025年03月14日公開

Director

矢崎仁司

Cast

橋本愛 
中川大志
山田杏奈
根矢涼香
久保田紗友
平井亜門
吉岡睦雄
草野康太
のん
臼田あさ美
中村蒼

OFFICIAL WEBSITE

Introduction

  魚喃キリコによる同名漫画を映画化した『ストロベリーショートケイクス』(2005年)、西加奈子による同名小説を映画化した『さくら』(2020年)をはじめ、絶大な支持を得ている女流作家たちの物語を、これまで独自の世界観で数多く手がけてきた矢崎仁司。今回5年ぶりとなる矢崎の最新作の原作には、日本のみならず海外でも人気を誇り、『BUTTER』や『ナイルパーチの女子会』といった作品で知られる柚木麻子による小説『早稲女、女、男』が選ばれた。タイトルの「早稲女(ワセジョ)」は早稲田大学に通う女子大生や卒業生のことで、同書では彼女たちの特徴について「融通がきかない、男っぽい、闘志剥き出し」と説明されている。本作の主人公は、そんなイメージを引き継ぐかのような生真面目で不器用な早乙女カナコ。演劇サークルで留年を繰り返しながら脚本家を志す長津田啓士との付かず離れずの関係が、もう3年続いている。内定先の出版社では、優しくて頼りがいのある先輩・吉沢洋一から好意を寄せられているが、今年こそ卒業するという約束を破った長津田のことも吹っ切れずにいる。果たして、人生の岐路に立たされたカナコの選ぶ道とは……?
 カナコ役を演じたのは、雑誌「週刊文春」で連載「私の読書日記」を抱え、自身も読書家である橋本愛。かねてより柚木麻子の読者でもあった橋本は、編集者として夢を持つ本好きのカナコにリアリティを与えている。俳優業だけにとどまらず、歌手としても話題を呼んでいる他、2024年には東京国際映画祭コンペティション部門の審査委員に抜擢されるなど、さまざまな領域で活動の幅を広げている。
 カナコの相手役となる長津田役には、『きょうのキラ君』(2017年)、『ReLIFE リライフ』(2017年)、『虹色デイズ』(2018年)といった人気青春映画で主演を飾ってきた中川大志がキャスティングされた。2022年には本格舞台『歌妖曲~中川大志之丞変化~』に初挑戦し、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』でも反響を呼ぶなど、今もっとも輝く若手俳優の一人。中川は情けない一面がありながらも、どこか憎めない長津田を好演している。
 長津田に片思いする本田麻衣子役には、『ミスミソウ』(2018年)で映画初主演を務め、『ひらいて』(2021年)、『ゴールデンカムイ』(2024年)、『正体』(2024年)など話題作へのオファーが止まない山田杏奈。大学入学を境に、モテを意識しすぎ、自分を見失いながらも、自分の気持ちに正直になっていく等身大の女性を演じ、多くの観客の共感を呼ぶ人物像を作り上げた。
 カナコの働く会社の上司であり、カナコにアプローチする洋一の元恋人でもある慶野亜依子役には、モデルとして活動したのち、『南瓜とマヨネーズ』(2017年)、『愚行録』(2017年)といった代表作で演技力を高く評価されてきた臼田あさ美。『私をくいとめて』(2020年)や『架空OL日記』(2020年)などでも、働く女性としての存在感を見せてきた臼田が本作でも30代の女性ならではの悩みを体現する。
 吉沢洋一役には、2006年に主演舞台「田園に死す」でデビュー後、多数の作品に出演し着実にキャリアを積み上げてきた実力派俳優の中村蒼。個性豊かな女性陣の中で、洗練された魅力を遺憾無く発揮した。
 また、同じく柚木麻子の原作が映画化された2024年12月27日公開の『私にふさわしいホテル』で主演を務めたのんが、同作でも演じた小説家・有森樹李に扮し、橋本愛とともにNHK連続テレビ小説『あまちゃん』コンビが再び共演を果たしているのも注目だ。
 本作『早乙女カナコの場合は』は、およそ10年にも及ぶラブストーリーを中心としながら、女性の生き方や女性同士の関係を描く映画にも仕上がっている。恋のライバル関係ともいえるはずのカナコ、麻衣子、亜依子たちは、それぞれに対立するのではなく、互いを鼓舞し、エールを送り合う。矢崎仁司にとって幻のデビュー作といわれる『風たちの午後』(1980年)や辻村深月の同名ミステリー小説を映画化した『太陽の坐る場所』(2014年)といった作品で、女性同士における強い感情を掬い上げてきた矢崎ならではの手腕がそこに光る。現代を生きるあらゆる世代の女性たちが、自分らしく一歩を踏み出すための普遍的な物語が、今ここに誕生した。

Story

 2014年の春、晴れて大学に合格した早乙女カナコは、新生活への期待に胸を膨らませている。入学式の人混みの中、苦しそうな表情で地面に倒れている男を発見したカナコは、とっさに彼の手を取って助ける。演劇サークル「チャリングクロス」の出し物で芝居をしていた脚本家志望である長津田啓士は、「君に会えてよかった」とカナコに声をかける――これが長津田とカナコの運命の出会いとなった。同じ趣味を持つ二人はその後すぐに付き合い始めた。
それから3年後のカナコの誕生日祝いの日、カナコが買ったペアリングを交換し、長津田は脚本を書くことと卒業することを約束した。
しかし翌月、ホタルイカ掬いを楽しんでいた二人だったが、長津田が卒業しないと言い出すと喧嘩に発展してしまう。一方、インカレサークルの勧誘で長津田に出会った本田麻衣子は一瞬で心惹かれ、「チャリングクロス」への入部を希望する。カナコと長津田の仲が険悪になる中、長津田と麻衣子は次第に距離を縮めていく。
 カナコはインターン先の大手出版社・永和出版から内定をもらい、そこで働くハイスペックな先輩の吉沢洋一から好意を寄せられる。カナコの親友・立石三千子は、カナコに悩む必要はないと言うが、こじらせていて他人の目を気にしてしまうカナコは、長津田と別れてすぐ洋一と付き合いだすことには躊躇してしまう。見かねた三千子は長津田に、カナコが洋一からアプローチされていることを話すと、長津田は動揺。長津田は気持ちを新たにするため長かった髪を切り、来年こそは社会人になることを約束して関係をやり直そうとするものの、カナコはその気持ちには応えられなかった。
 長津田が脚本の執筆時によく訪れる池で、麻衣子はカナコに長津田への思いを宣言。しかし、酔い潰れて「指輪……」とうわごとを言うカナコの姿を見た麻衣子は、取り戻しに行くことに。洋一を巻き込んで夜の池を捜索中、麻衣子は水が苦手だったにもかかわらず、足をつった洋一を助けるため水の中へと入っていく。思わず笑みが溢れる二人。麻衣子にとって、それは苦手なものを克服した記念すべき瞬間となった。
 カナコは入社前に経験を積むため、営業部の慶野亜依子のもとで働き始める。何事にも計画的な亜依子は、将来を考えていた相手である洋一から突然別れを告げられ、まだ忘れられていなかった。クリスマスを目前にし、洋一と長津田の間で揺れ動いていたカナコは亜依子からのアドバイスにも背中を押され、どちらも選ばないことに決めた。
 6年後、カナコは憧れの作家・有森樹李の担当編集者となり、夢を叶えていた。有森の刊行記念による講演会で久しぶりに母校を訪れたカナコは、「チャリングクロス」の暗い部室で一人、長津田との思い出の写真を開く。そして卒業以来、ずっと会っていなかった長津田に電話をかけてみる。繋がるはずがないと思いきや、長津田はいつもの声ですぐに電話に出た。長津田もまた、カナコからの電話を期待して番号を変えずにいたのだった。再会した長津田は、芸能プロダクションのマネージャーとして立派な社会人になっていた。
 三千子を見送るために空港にいたカナコのもとに、長津田からの着信が鳴る。「俺の部屋のドア、強くノックしろよ」とだけ言い残すと、電話は切れてしまう。それは、かつて「チャリングクロス」の部室のドアに貼ってあった「死者を起こすには強くノックすること」という映画監督・ジャン・ユスターシュによる言葉を、カナコに彷彿とさせた。何かあったのか心配になったカナコは、長津田の部屋に向かって無我夢中で走り出す……。

Poster

早乙女カナコの場合は

Stills