開戦前夜

開戦前夜

2026年07月31日公開

Director

石井裕也

Cast

池松壮亮
仲野太賀
岩田剛典
中村 蒼
三浦貴大
二階堂ふみ
杉田雷麟
北村有起哉
嶋田久作
中野英雄
渡辺いっけい
別所哲也
松田龍平
奥田瑛二
國村 隼 
佐藤隆太
江口洋介
佐藤浩市

OFFICIAL WEBSITE

Introduction

ある日突然、僕たちは日本の命運を託された――。
幾千万もの命の行く末とその未来を。

大臣となって、日本の未来を決める。
1941(昭和16)年4月、公職・民間を問わず突如集められた各界のトップエリートである若者たちに託されたのは、「模擬内閣」を結成し、アメリカを中心とする諸外国と開戦すべきか机上演習で未来をシミュレーションすることであった。その組織の名は「総力戦研究所」。
苦しみと情熱の中で議論を繰り返した末、彼らが見たのは――原爆投下以外のほぼすべてを予言した、日本の「圧倒的な敗北」という衝撃のシナリオだった。

現代の戦争において、兵士が戦地に赴く前から各国の「インテリジェンス」と呼ばれる機能を駆使した知能戦は既に始まっており、ウクライナ、ガザ・イスラエル、イランと戦火がやむことがない近年においてもその重要性と注目度は高まっている。そのインテリジェンスを昭和の最も困難な状況下で任されたのが、石井裕也監督が描く『開戦前夜』の主人公たち、総力戦研究所のメンバーであった。


一発の弾丸も飛ばない。
だがここは、人間の命を懸けた過酷な戦場だった。

 模擬内閣の大臣として招集された若者たちは何をどう話し合い、「開戦すれば長期戦では必敗」というその後の歴史を予知する結果を導いたのか。スリリングな議論の過程を丹念に見せていく。
日本政府は、真珠湾攻撃をする1941年12月8日からさかのぼること8か月前の4月から、若きエリートたちを集めた総力戦研究所で、アメリカを中心とする諸外国との総力戦をシミュレーションする机上演習を開始していた。メンバーは政府機関や陸軍、海軍、民間企業から集められた。彼らは突然、模擬内閣の閣僚に任命され、アメリカと開戦したらどうなるか、どう戦えば勝てるのか、という議題を与えられる。しかしながら、議論をするに従って見えてくるのは圧倒的な国力の差。ついには、開戦となれば「日本必敗」との結論を導き出し、当時の近衛内閣の前で発表していたのであった。
 石井裕也監督の『開戦前夜』は1941年、内閣総理大臣直轄の教育・研究機関として設置された総力戦研究所に召集された日本の若手エリートたちによる机上演習の行方と、「日本は長期戦で必敗」と予測しながら、そのデータを顧みられることがなかった歴史的事実を基にしたドラマである。緻密なデータを前にしても、戦争やむなしとなった「空気」はどう醸成されていったのか。そしてなぜ日本は、負けるとわかっていた戦いに突き進んだのか? 今、歴史に葬られた「不都合な真実」が、スクリーンで牙を剥く。



魂を削り合う、豪華キャストたちの競演
 
 民間金融機関の調査課長から突然、模擬内閣の「内閣総理大臣」役に任命され、戸惑う主人公・宇治田洋一を演じたのは、これまで何度も石井監督の作品で過酷な状況をサバイブする主人公を演じてきた池松壮亮。多くの所員が自分たちの派遣元のしがらみを捨てきれない言動をとる中、政策の欺瞞を堂々と指摘する通信社の政治部記者・樺島茂雄には仲野太賀。また、海軍大学校を首席で卒業し、海外での知識が豊富故、避戦を強く訴える異例の海軍少佐・村井和正に岩田剛典。中村蒼らが演じる陸軍側との意見のぶつかり合いも見どころとなっており、最終的には三浦貴大らが演じる経済畑の所員たちの考察が大きな意味を持っていく展開も見逃せない。
そして、東條英機を演じた佐藤浩市をはじめ、國村 隼、佐藤隆太、江口洋介らの研究所メンバーとの緊張感あふれるやり取りも、観る者を惹きつける。
 石井監督は総力戦研究所の若手俳優たちが火花を散らす演技の応酬を本作の軸に置いており、彼らが一堂に会する「梁山泊」としての面白さに注目だ。


「戦時中の悲劇」は今、本当に終わったのか――
 
 長らく歴史に埋もれていた「総力戦研究所」が日の目を見たのは、1983年にノンフィクション作家の猪瀬直樹がかつての所員たちに取材をしてまとめた「昭和16年夏の敗戦」(中公文庫)がきっかけとなっている。近年ではNHK連続テレビ小説「虎に翼」で主人公・猪爪寅子が戦後に再婚する新潟地方裁判所の裁判官・星航一が総力戦研究所の模擬内閣で司法大臣を務めた過去を持つエピソードが描かれ、ドラマ内で開戦を止められなかった当事者としての苦悩にスポットライトがあてられて、大きな話題を呼んだ。
 今回公開となる『開戦前夜』は2025年夏に放送されたNHKスペシャル「シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~」のドラマパートの完全版となる。所員の多くは30代前半。国立公文書館や国会図書館などに残る膨大な資料を紐解いて、彼らがどのように当時の日本の状況を分析し、もし開戦したら日本と日本国民がどのような状況に陥るかのシミュレーションを行ったか、本作独自の架空の人物像を創作して、彼らにこれを託しながら作品を構築していった。

開戦から80年以上が過ぎ、世界情勢も日本社会も大きく変化している2026年。「今」だからこそ、当時の不都合な真実を直視する意味がある。「同じ過ちは絶対に繰り返さない」ー本当に私たちはそう言い切ることができるだろうか?

Story

 1941(昭和16)年4月、 日本の各団体から若き先鋭が集められた。戦争の行方をシミュレーションするため模擬内閣を結成し、アメリカを中心とする諸外国との総力戦の可能性を探る陸軍の強い目的から立ち上がったプロジェクトだが、近代戦は軍事面だけでなく、思想や政略、経済等の各分野の協力がなくては成り立たないとの意向を受け、近衛文麿内閣総理大臣の下に設置された研究機関・総力戦研究所である。

産業組合中央金庫の調査課長である宇治田洋一(池松壮亮)は、平和工作で動き回る上司・井川(別所哲也)の推薦で総力戦研究所のメンバーに選抜されるが、満州での両親の死の真相を追う中で憲兵から理不尽な扱いを受けた過去を持つ。夫の戦死を受けて実家に戻ってきた妹の小百合(二階堂ふみ)とその娘・初子、今後どう身を立てるか暢気に構える二郎(杉田雷鱗)を守るうえでも政治に深く関わらないように警戒するが、彼を待っていたのは「模擬内閣」での総理大臣という大役だった。アメリカと開戦すべきか否か。大きな議題を与えられた中、陸軍大臣に任命された陸軍少佐の高城(中村蒼)や陸軍次官となった陸軍主計大尉の田中(堀家一希)など開戦派の声は大きく、内務省、大蔵省、文部省、農林省の大臣に選ばれた所員たちもその意見に続く。
一方、通信社から派遣され、内閣書記官長となった樺島(仲野太賀)や海軍きっての頭脳とその名を轟かせる海軍大臣任命の村井(岩田剛典)、外務大臣となった安西(大津尋葵)や企画院総裁の峰岸(三浦貴大)など海外の事情をよく知る者たちは軍の拡張路線に伴う物資輸送の穴を解いていく。そもそも、日本にはどれだけの石油備蓄があるのか。それすらも軍の機密事項として正確なところがわからない。
皆の意見を聞くうちに、宇治田の脳内に開戦すれば否応なしに生活が巻き込まれる国民の未来予想図が見えてくる。これ以上は見過ごせない、彼の鉛筆が突如走り出す。「開戦」か「避戦」か。自らの命の危険を感じながらも、やがて彼らは、長期戦必敗の結論を導く。そのシミュレーションは、原子力爆弾が落とされるという出来事以外は、ほぼ、日本が辿った敗戦の歴史通りの内容であった。だが、その結論を受けた東條英機(佐藤浩市)は思わぬ言葉を所員に伝えるのであった。

Poster

開戦前夜