1978年ーたった1年を永遠にした若者たちがいた。 パンクに影響を受けた彼らは「東京ロッカーズ」と呼ばれ、日本のロックに革命を起こす。その伝説的なムーヴメントが奇跡の映画化! わずか1年のムーヴメントだったにも関わらず、その後のロック・シーンに大きな影響を与えた東京ロッカーズ。「インディーズ」「自主レーベル」「オール・スタンディング」「ロック・フェス・スタイル」これらはすべて彼らを中心としたムーブメントから生まれた言葉だ。そんな80年代のアンダーグラウンドな音楽シーンを当時の写真と共に生々しく記録した地引雄一の『ストリート・キングダム』は、まさに日本に「インディーズ」と呼ばれる音楽シーンが生まれる瞬間を描いた名著だ。地引はカメラマンとして東京ロッカーズに関わり、やがて彼らと社会をつなぐ窓口として重要な役割を担った。そんな「インディーの生き証人」が綴った、ロック・ファンにはバイブルのような本を原作に、実話を基にした青春音楽映画として映画化したのが『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』だ。 パンク・ロックで世界を変えたセックス・ピストルズが解散した1978年。カメラマンになる夢に挫折した青年、ユーイチは、セックス・ピストルズを聴いてパンクに夢中になる。そして、「ロッキン・ドール」という手作りのミニコミ誌を手にしたことをきっかけに、東京にもパンクに触発されたバンドが次々と登場していることを知った。TOKAGE、軋轢、S-TORAなど、新しい価値観を持った彼らは「東京ロッカーズ」と名乗って団結。自分たちでレコードを作り、流通し、イベントも自ら企画して行うDIYな姿勢と新しいサウンドでロック・シーンに革命を起こそうとする。そして、ユーイチは「ロッキン・ドール」を一人で手掛けるサチやTOKAGEのモモなど、東京ロッカーズの面々と交流を深めながら自分の生き方を見つめ直していく。 本作の監督を務めたのは、10年ぶりにメガホンをとる田口トモロヲ。東京ロッカーズに大きな影響を受け、80年代にはパンク・バンド、ばちかぶりのヴォーカルとして活動していた田口は、『ストリート・キングダム』を読んで映画化を熱望。以前から地引と交流があった田口は、地引に直談判して映画化の了解を得ると、約10年の月日をかけて映画を完成させた。脚本家としてタッグを組んだのは、田口の監督デビュー作『アイデン&ティティ』(03年)で脚本を担当して、田口と同じくロックを心から愛する宮藤官九郎。リザードをTOKAGE、フリクションを軋轢、S-KENをS-TORAとするなど、実際のバンド名や人名を微妙に変え、原作に描かれた実話をベースに宮藤ならではのオリジナルのドラマ要素も加えて脚本を執筆。東京ロッカーズの軌跡を追いながら、自分たちの理想の音楽を追い続ける若者たちの青春映画としても楽しめる物語に仕上げた。 監督・田口トモロヲ、脚本・宮藤官九郎 音楽・大友良英 ロック映画の金字塔『アイデン&ティティ』の面々が再集結。 『アイデン&ティティ』を愛する俳優たちが新たな名作を生み出す 主人公のユーイチを演じるのは、田口作品には欠かせない峯田和伸。一度は夢に挫折しながら、東京ロッカーズという光を見つけて変わっていくユーイチを熱演。同じくユーイチと物語を牽引するリザードのモモヨをモデルにしたモモを若葉竜也。そして、ゼルダのチホをモデルにしたサチを吉岡里帆。フリクションのレックをモデルにしたDEEPを間宮祥太朗。S-KENをモデルにしたS-TORAを大森南朋。スターリンの遠藤ミチロウをモデルにした未知ヲを仲野太賀、じゃがたらの江戸アケミをモデルにしたヒロミを中村獅童が演じるなど、名だたる俳優陣が伝説的なミュージシャン役に挑戦しているのも注目したいところ。彼らは『アイデン&ティティ』の大ファンで、田口作品に出演することを熱望。そして、映画を通じて東京ロッカーズや当時インディーズ・バンドのことを知って、彼らの生き様や音楽に共感し、当時の映像や作品に触れて役にのめり込んでいった。 映画でバンドが演奏する名曲の数々も本作の重要なエッセンスだ。「観客には本物の演奏を聴いてもらいたい」という田口監督の想いから、歌と演奏はオリジナル曲の吹き替えとなったが、それぞれの楽曲を演奏できるまでに上達した俳優たちによる圧巻のパフォーマンスは迫力に満ちていて、映画館のスピーカーを通じて大音量でオリジナル曲が聴けるのもロック好きにはたまらない。80年代のライヴハウスの状況をよく知る田口は、バンドの演奏だけではなく、当時の観客の反応など細部に至るまで注意を払って臨場感溢れるライヴ・シーンを生み出した。そしてサントラは田口同様、リアルタイムで東京ロッカーズのことを知る大友良英。主題歌はリザードのカバー「宣戦布告」で、大友のバンドの演奏をバックに峯田と若葉がパンクスピリットあふれる歌声を披露。2人の力強い歌声には、自分たちのロックを追い続けた東京ロッカーズの対するリスペクトが込められている。 70年代後半から80年代初頭の東京を再現する、衣装や美術のこだわりも見逃せない。渋谷屋根裏、S-KENスタジオ、旧新宿LOFT、京大西部講堂といった日本のロックの聖地をセットで忠実に再現。映画に登場するレコードのジャケットやフライヤーも、すべて実際にあったものをベースにしたデザインが再現されていて、スクリーンの細部から新しいムーヴメントを作り出そうとした若者たちの熱気が伝わってくる。「インディーズ」という言葉がまだなかった時代。自分たちで雑誌を作り、自分たちでレコードをプレスし、自分たちでシーンを作る。そんな、当時としては考えられないチャレンジに挑んだ東京ロッカーズが「インディーズ」というシーンを生み出した。「オールスタンディング」「ロック・フェス・スタイル」など今や当たり前のように浸透したライヴのやり方も、この時代に産み落とされたもの。東京ロッカーズは、SNS、インターネットやジンなどを通じて個人が自由に自己主張する現在の若者文化の先駆けでもあった。それほど重要でありながら、あまり知られることがなかったムーヴメントを、改めて世に知らしめたいという田口監督の情熱。そして、今回の映画を通じて東京ロッカーズやスターリン、じゃがたらなど当時のバンドに出会って刺激を受けた出演者やスタッフなど若い世代の興奮が映画に凝縮。ひとつの時代、ひとつの革命をエネルギッシュに描いたロック映画の新たな傑作が誕生した。
パンク・ロックのシンボルだったセックス・ピストルズが解散した1978年。パンクの種は世界中の蒔かれて目吹き始めていた。写真家になる夢に挫折したユーイチは、ラジオでセックス・ピストルズの曲を聴いて衝撃を受ける。もっとパンクが聴きたい! と探し回るユーイチは「ロッキン・ドール」というミニコミ誌を手に入れ、東京に自分が知らないアンダーグラウンドなロック・シーンがあることを知った。「ロッキン・ドール」を一人で作っているサチからの案内で、ユーイチは渋谷のライヴハウスでTOKAGEのライヴを目撃。これまでのロックとは違うTOKAGEの熱気に満ちた演奏。突然立ち上がって取り憑かれたように踊り出す観客に圧倒されたユーイチは、反射的にカメラのシャッターを切っていた。 カリスマ性を持ったTOKAGEのヴォーカル、モモをサチに紹介されたユーイチは、彼らが自分たちでレコードを作っていることを知って驚く。TOKAGEのメンバーはユーイチの写真を気に入り、ユーイチは自由に写真を撮っていいという許しを得た。ライヴハウスに出入りするようになったユーイチは、TOKAGEや軋轢、S-TORAなどパンクに触発されたバンドが一緒にライヴやイベントを行い、「東京ロッカーズ」という新しいムーヴメントを自分たちの手で生み出そうとしていることを知る。東京ロッカーズの面々から信頼を得たユーイチは、彼らの活動を記録するカメラマンとして、そして、彼らと外の世界を繋ぐ窓口として東京ロッカーズの行く末を見守ることに。なかでも、モモとサチとの友情は深まり、モモの実家のレコード屋で3人は夢を語り合った。 やがて、東京ロッカーズをマスコミが取り上げるようになるとライヴは大盛況。レコード会社からも誘いがかかる。しかし、彼らの目的は売れることではなく、自分たちにとって最高の音楽をやること。予想外の成功にバンドの足並みが揃わなくなった彼らは、「東京ロッカーズ」という看板を下ろして、それぞれの信じた道を進むことを決断する。その頃、過激なパフォーマンスで話題を呼ぶ解剖室やごくつぶしなど個性的なバンドが次々と登場。東京ロッカーズが生み出した東京のインディー・シーンが新たな熱気を帯びていくなかで、TOKAGEはメジャー・デビューに踏み切る。バンドの人気は高まるが、レコード会社やメンバー間の対立がモモを精神的に追い込んでいった。一方、サチは自分のバンド、ロボトメイアを結成。ミュージシャンとして新しいスタートを切る。仲間たちがそれぞれのやり方で自分が信じる音楽に向き合う姿を見て、ユーイチは人生を変える決断を下すことに————。